審査請求書 平成21年1月20日 東京都都知事殿 審査請求人 住所 ***−**** ****************** 氏名 ** ** 年齢 **歳 電話 **-****-**** 次のとおりに審査請求します。 1. 審査請求の対象となる処分 児童福祉法18条17による、保育士試験 試験事務のひとつである、問題作成についての処分 正解として成り立つ「3」を正解とせず採点や発表を行っていること。 ※試験事務の定義については添付資料1「平成20年度事業計画」による。 2. 1の処分があったことを知った日 平成20年11月25日 3. 審査請求の趣旨及び理由 趣旨 請求人が行った試験問題のうち、養護原理問8について、発表された正答「1」のほかに 「3」も正答として成り立つので、選択肢「3」も正解とすることを求めます。 理由 はじめに処分のあった日について補足させて頂きます。 児童福祉法18条17に審査請求できる旨が記載されているが、試験問題等に記載はなく また、試験を行う機関からの教示もなかったため、得点個票が届いた平成20年11月25日を 実際に採点された点数の確認できた日といたします。 また、解答も含めた試験問題作成が「試験事務」にあたるということを東京都が委託している 社会法人全国保育士養成協議会へ電話にて口頭で質問したところ 「試験問題作成は、児童福祉法28条に記載がある試験事務に相当します」との答えを口頭にて聞きました。 文書にての回答をお願いしたが、現在までに「確認する」との言葉のまま何も回答は頂けていません。 次に選択肢「3」が正解として成り立つ根拠を述べます。 〔はじめに〕 以下に、養護原理問8の正解が3であるとも言えるその根拠を述べるが、試験問題作成機関の発表した正解 (選択肢1)と選択肢3との違いは、記述Aが○であるか×であるかの一点なので (選択肢1はA=○・選択肢3はA=×)、ここでは、記述A=×とも言えるその根拠を述べることで 養護原理問8の正解が3であるとも言えるその根拠を述べることに代えることをお断りします。 ※ 問題については、添付資料2「養護原理試験問題」を確認ください。 T 問8の問題文に、「次の文は、『児童福祉法』第28条第1項に関する要保護児童についての記述である。」 とあることから、記述Aは「児童福祉法」第28条第1項に関する要保護児童についての記述であると言えます。 つまり記述Aに述べられている、 「実父母が資質上の欠陥のため、子どもに対する監護能力が極めて不十分で、生活環境も劣悪である場合、  客観的な立場からしても児童養護施設の方が子どもにとってより良好な生活環境であっても、  実父母が子どもを自ら愛情を持って養育する意思がある場合」 という状況は、「児童福祉法」第28条第1項の、 「保護者が、その児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが著しく当該児童の 福祉を害する場合において、第二十七条第一項第三号の措置を採ることが児童の親権を行う者又は 未成年後見人の意に反するとき」 に相当するものであり、この設問は、そのようなとき、都道府県はどのようにできるか・ どのようにできないか・どのようにすべきかといったことが問われているものであると解することができます。 実際に私はそのように解し、そのようなときは、第28条第1項第一号、 「第二十八条  保護者が、その児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他保護者に監護させることが 著しく当該児童の福祉を害する場合において、第二十七条第一項第三号の措置を採ることが児童の親権を 行う者又は未成年後見人の意に反するときは、都道府県は、次の各号の措置を採ることができる。 一 保護者が親権を行う者又は未成年後見人であるときは、家庭裁判所の承認を得て、 第二十七条第一項第三号の措置を採ること。」 に照らして、「家庭裁判所の承認を得て、都道府県は、第二十七条第一項第三号の措置を採ることができる」 と判断しました。 したがって、これを「それ(実父母が子どもを自ら愛情を持って養育する意思)を尊重して長期的に 観察すべきである。」とする記述Aは、「児童福祉法」第28条第1項に関する要保護児童についての 記述としては不適切な記述と考え、A=×と解答できます。 U 問8の設問で、その適不適を判断する記述(A〜D)が、「『児童福祉法』第28条第1項に関する要保護児童についての記述」と   うたわれていなければ、これを同第27条第1項以前の過程におけるものと解することもでき、その場合には   「実父母が子どもを自ら愛情を持って養育する意思」を尊重し、また、安易に親子が引き離されることのマイナス面等も充分考慮して、   児童のおかれている状況によって危険性を十分に留意したうえでの観察や在宅指導を続けていくということは   重要であるとも考えられます。 しかし、冒頭に「次の文は、『児童福祉法』第28条第1項に関する要保護児童についての記述である。」 とある以上、記述Aが第27条第1項以前の過程におけるものと解することは設問の趣旨にそぐわない、 記述Aの述べる状況は、調査・判定・指導等手を尽くしながらもなお児童福祉法第27条第1項第3号措置が 必要であると認められている段階なので、やはりAの解答は×となります。 【参考】 正解発表前の、通信教育・専門学校各社の解答速報では、発表しているすべての社で解答を3(A=×)とし、 試験問題作成機関の正解発表まで訂正されることはなかった。 解答速報で模範解答を3とした通信教育会社・専門学校は、次の5社。 ・ユーキャン ・東京リーガルマインド(LEC) ・CBライセンス学院 ・キャリア・ステーション ・東京アカデミー また、このうちの2社では、解答を3とした根拠を次のように述べている。 □ユーキャン ──────────────────────────────────────────── 「養護原理」問8選択肢Aについては、児童福祉法第28条第1項に基づいて考えると、原則的には、 子どもにとって生活環境が劣悪で、児童養護施設での生活環境のほうが子どもにとって適切であるならば、 長期的に観察すべきではなく、入所措置をとるのが妥当として、この選択肢を誤りとし、 弊社では解答速報を3としました。 ──────────────────────────────────────────── □東京リーガルマインド ──────────────────────────────────────────── 肢Aについては、「実父母が…子どもに対する監護能力が極めて不十分で、生活環境も劣悪である場合」が、 児童福祉法第28条第1項にいう「保護者に監護させることが著しく当該児童の福祉を害する場合」に 当たるので、都道府県は、実父母の意に反しても、家庭裁判所の承認を得て、 児童福祉法第27条第1項第3号の措置(施設入所の措置等)を採ることができることになります (28条1項1号)。そして、児童の福祉が「現に」害されているにも関わらず、 実父母の意に反しても施設入所の措置等を採ることができる都道府県が直ちに対策を講じないことは、 そもそも児童福祉の理念に反するので、「長期的に観察」することは不適切であると考え、 肢Aは×としました。(―添付資料3) ──────────────────────────────────────────── これらのことからも、上記のような筋道で解答を導くのは非常識ではないと考えられます。 V しかしながら一方、(そうととるに足る明確な記述がないので、このような考え方が成り立つかどうか わからないが、)この設問を、記述Aを家裁に申し立てた後の段階のことととらえて 適否を判断するものとして考えてみることもできないではないかもしれない。 が、この考え方によっても、ケースによっては記述Aの通りである場合があり得ないとは言い切れない ものの、以下の資料等から原告である都道府県知事(ないしその事務の委任を受けた児童相談所長)は 「長期的に観察すべき」というよりも、むしろ家裁の早急な承認が得られるよう積極的に働きかける・ 努めるべき場合が多いといえると考えられる。 【参考】 ●「子ども虐待対応の手引き」(厚生労働省) ―添付資料4(ここでは第6章の関連部分を特に抜粋して添付する) ● 児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について (各都道府県知事、指定都市市長あて厚生省児童家庭局長通知・平成9年6月20日児発第434号) ──────────────────────────────────────────── 五 施設入所等の措置(法第二七条及び第二八条関係)について (一) 虐待等を受けている児童について法第二七条第一項第三号に規定する措置を採るに当たっては、 施設入所後の児童に対する処遇及びその家庭環境の調整を円滑に図る観点から、保護者等の意見を十分聴き、 その同意を得て行うことが望ましい。 しかし、これが困難な場合には、法第二八条に定める家庭裁判所の承認の申立てを行うこと等により、 児童の最善の処遇を最優先した措置が確保されるよう万全を期されたい。 なお、この場合においては以下の点に特に留意されたい。 ア 法第二八条に定める家庭裁判所の承認の申立てを行った後、家庭裁判所調査官の調査に協力するなど、 速やかに審判が開始され、終結するよう努めること。 イ 法第二八条に定める家庭裁判所の承認の申立てを行った後、審判が終結し施設入所等するまでの間、 一時保護等の積極的活用により適切に児童の保護を図ること。 ──────────────────────────────────────────── なお、上記「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」に関しては、 平成17年改正の「児童相談所運営指針」にも、 ──────────────────────────────────────────── 第4章 援助  第8節 家庭裁判所に対する家事審判の申立て 1.法第28条の規定に基づく承認に関する審判の申立て、 11) この申立てについては、本指針に定めるほか、平成9年6月20日児発第434号 「児童虐待等に関する児童福祉法の適切な運用について」による。 とされていることを付記する。 ●埼玉新聞連載特集記事―「子ども虐待 家族間暴力の現場から」第3部  ―添付資料5 W さらに、実際の審判においても、「実父母が子どもを自ら愛情を持って養育する意思がある場合」にも 「長期的に観察すべき」という結果にいたらなかった(申し立て後とくに長期的な観察という過程を 経ることなく、家裁の承認が下りた)ケースが存在する。 【参考】 ●事件番号:平成17年(家)第4651号/事件名 :児童の福祉施設入所承認申立事件/ 裁判所 :東京家庭裁判所 ―添付資料6 ●事件番号:平成16年(家)第257号/事件名 :児童の福祉施設入所承認申立事件/ 裁判所 :広島家庭裁判所福山支部 ―添付資料7 ● 事件番号:平成12年(家)第136号/事件名 :児童の里親委託又は福祉施設収容の承認申立事件/ 裁判所 :横浜家庭裁判所 ―添付資料8 X 一方、上記に挙げた審判例のほかに、たとえば少々古い例になるが、この記述Aの設定に一見酷似した 状況で、「長期間にわたって経過を観察し、調査を継続した上、事態はかなり改善され、 今のところ施設収容の必要はないものと認め、申立てを却下した」事例 (事件番号:昭和49年(家)第311号、昭和49年(家)第312号/ 事件名:児童の施設収容申立事件/裁判所:大津家庭裁判所―添付資料9参照) がある。 しかしこの場合も、上記T、Uで述べた審判前の都道府県の判断、動きを主語とする場合 実際に1時保護を行い、指導を行い、一度施設へ保護をしたが親が連れ戻したが 親の意に反して、収容が必要と判断し28条から実際に収容の承認をと実行しています。 また、最終的に却下となりましたが、判決文に ──────────────────────────────────────────── 二(2) 両親の資質上の欠陥のために、その事件本人らに対する愛情が盲愛的、溺愛的であり監護方法が不適切で、 正しい躾を与えることができないということが問題なのである。しかし、たとえ父母の監護方法が客観的に 見て適切を欠くものであつても、父母がその子を自ら養育する意思と愛情を有する限り、 自らの手でその子を養育しようとする自主性はできるだけ尊重すべきであり、 自然な親子の生活から児童を分離することによるマイナス面も考慮しなければならない。 従つて、当裁判所としては、なお指導の如何によつては施設収容によらなくても 改善の余地があるかもしれないという考えのもとに、本申請受理後相当長期間にわたり経過を観察し、 調査を継続してきた…… ──────────────────────────────────────────── とあるように、短絡的に「父母がその子を自ら養育する意思と愛情を有する限り」→長期的に観察すべき とされているわけではなく、「父母がその子を自ら養育する意思と愛情を有する限り」→「自らの手で その子を養育しようとする自主性はできるだけ尊重すべきであり、自然な親子の生活から児童を 分離することによるマイナス面も考慮しなければならない」という観点から 「なお指導の如何によつては施設収容によらなくても改善の余地があるかもしれない」と考えて 「申請受理後相当長期間にわたり経過を観察し」たというのが正確なところである。 つまり、結果として長期的な観察という過程を経るにいたったのは、単に“実父母に子どもを自ら愛情を 持って養育する意思があること”その一点によったわけではなく、 “実父母に子どもを自ら愛情を持って養育する意思があること”に加え、この実父母に対しての “指導の実行”および“その指導による改善の可能性にある程度見込みがある”という要素があったから こそのものであったと考えられるのである。 【参考】 ● 事件番号:昭和49年(家)第311号、昭和49年(家)第312号/ 事件名:児童の施設収容申立事件/裁判所:大津家庭裁判所 ―添付資料9  Y また、問題文にある「すべき」という言葉は強制力はないにしろ、原則的に行うことをいうのが    一般的な使い方であるが、上記却下された事例は判決雑誌に掲載されたものでは唯一のものであり    多くの場合は承認されている。 【参考】 児童福祉法第28条事件の平成11年から平成15年までの審理結果のうち、認容は74パーセント、 取下げは23パーセント、却下は3パーセントである(司法統計による。) つまり、原則として考えると「長期的に観察」より「何かしら指導や保護を行ったり、 審判を仰ぎ承認される」ほうが一般的であるといっても非常識ではないと考えられます。 以上の根拠により、記述A=×と言うことも可能であり、 つまり、選択肢3も正解であるということが可能である。 4. 処分庁の教示の有無及びその内容    無し    ただし、指定機関から口頭にて、「問題作成は児童福祉法18条17にある試験事務に係る」ということを    確認させていただきました。