事件番号:平成14年(ラ)第87号 事件名 :児童福祉施設収容承認申立審判に対する抗告事件 裁判所 :札幌高等裁判所 判決日 : 平成15年1月22日 (2003-01-22) 判示事項:  母親が「代理によるミュンヒハウゼン症候群」であると認定することは困難であるが、児童(4歳)に対するこれまでの父母の監護養育方法は、少なくとも客観的には適切さに欠けており、児童の福祉の観点からは、児童を児童養護施設へ入所させることが相当であるとした審判に対する即時抗告審において、児童は一事保護された後順調に回復し、母も精神科医のカウンセリングを継続的に受けるようになったが、更に関係機関の指導、援助の下に監護養育方法を点検、改善していく必要が認められるとして、即時抗告を棄却した事例 参照条文: 児童福祉法28条 掲載文献: 家庭裁判月報55巻7号68頁 : 上智法学論集 48(3・4)号253頁 判例研究 代理によるミュンヒハウゼン... 上智法学論集 48(3・4)号253頁 判例研究 代理によるミュンヒハウゼン... 民商法雑誌 129(4・5)号766頁 家事裁判例紹介 児童福祉施設収容承認... -------------------------------------------------------------------------------- 主   文 1 本件抗告をいずれも棄却する。 2 抗告費用は抗告人らの負担とする。 理   由 1 本件抗告の趣旨及び理由 別紙「抗告状」(写し)記載のとおりである。 2 当裁判所の判断 当裁判所も,事件本人を児童養護施設に入所させることの承認を求める相手方の本件申立ては理由があるものと判断する。 その理由は,次のとおり原審判を補正するほか,原審判の「理由」に説示されたとおりであるから,これを引用する。 (1)原審判5頁8行目の末尾に続けて「その際,同病院では,予め抗告人亜希子に対し,    点滴用器具の取扱方法等について指導をした。」を加える。 (2)同8頁9行目の「本件一時」を「本件一時保護」と,同9頁7行目の「児童福祉委託」を「児童福祉施設」とそれぞれ改める。 (3)同10頁15行目の「至っていること」の次に   「(なお,抗告人らは,中心静脈カテーテルは感染症等の合併症の危険をはらむものであるところ,    事件本人の症状が改善したのは,平成13年12月9日を最後に中心静脈カテーテルを止めたことが原因であって,    本件一時保護による母子分離をしたからではない旨主張する。    しかし,事件本人にみられた上記のような特異な感染症の症状に照らすと,    その原因が中心静脈カテーテル装置によって一般的に起こり得る感染症にすぎなかったと認めることはできず,    したがって,事件本人の症状の改善が単に中心静脈カテーテルを中止したことによるものとみるのは困難である。)」を加える。 (4)同10頁24行目から同頁25行目にかけての「意向を示しているようであるが,」を   「意向を示し,抗告人らの友人も援助を申し出ていることが認められるが,」と改める。 (5)同10頁末行の末尾に続けて「なお,事件本人は一時保護された後,順調に回復し,また,    抗告人亜希子は精神科医のカウンセリングを継続的に受けるようになったが,    本件においてはこれらを踏まえ,更に関係機関の指導,援助の下に抗告人らの監護養育方法を点検,    改善していく必要が認められるから,その間は事件本人を児童養護施設に入所させておくのが相当である。」を加える。 3 よって,主文のとおり決定する。(裁判長裁判官 坂本慶一 裁判官甲斐哲彦 石井 浩)